よく聞く話
クリトリスは外から見える小さな粒がすべてで、Gスポットは別の場所にある別のスイッチ。そう紹介されることがあります。
読んだ研究
- O'Connell ほか 2005(J Urol)解剖・MRI・組織の研究を整理した、クリトリスの構造の総説
- 分かったこと
- 外から見える亀頭部(グランス)は、クリトリスの外に出ている唯一の部分で、ほかは左右の脚・海綿体・球部など、体の内側に広がる勃起性の組織。尿道の先と膣は勃起性ではないが、クリトリスとひとかたまりの組織になっていて、女性の性的な反応とオーガズムの場だとみられる、と書いている。教科書の説明には不正確な点がある、とも指摘。
- 読むときの注意
- Gスポットを探した研究ではなく、クリトリスの構造の整理。
- Jannini ほか 2014(Nat Rev Urol)女性のオーガズムと解剖を整理したレビュー
- 分かったこと
- Gスポットという単独の構造は見つかっていないが、クリトリス・尿道・膣の前の壁の関係と動きから、「クリトリス尿道膣複合体」という考えが出た。適切に刺激されると、この一帯がオーガズムの反応を起こしうる、という。
- 読むときの注意
- 複合体説を提案する立場の著者らによるレビュー。
- Hoag ほか 2017(J Sex Med)13体の解剖
- 分かったこと
- 前の壁に勃起性の組織は見当たらず、例外は、尿道の先がクリトリスに接するところだけだった。
- 読むときの注意
- 「尿道の先がクリトリスに接するところ」という限られた範囲の記述で、複合体説の全体を裏づけるものではない。
- Kilchevsky ほか 2012(J Sex Med)1950〜2011年の文献を調べた総説
- 分かったこと
- 画像の研究では、クリトリス以外に、直接刺激すると膣のオーガズムにつながる独立した構造は示せなかった。
- 読むときの注意
- クリトリス説を支持する材料にも読めるが、「クリトリスが正体だ」と断定した文ではない。
この説が説明しようとしていること
膣の入口寄りの前の壁を押すと感じやすい、という報告は多く残っています。複合体説はその理由を、クリトリスの根元(内側の部分)が前の壁に近く、押される・引かれることで動くためだ、と説明します(Foldès ほか 2009 の超音波、→ 画像の面)。
説の弱いところ
この説を直接確かめるには、感じ方を測りながら構造の動きを見る必要がありますが、超音波の研究は数人規模にとどまります。また Ostrzenski(2019)のように「独立した構造がある」とするレビューもあり、複合体説が最終的な答えとは限りません(→ 存在の面)。
まだ分かっていないこと
- 感じ方が、クリトリスの根元の動きでどこまで説明できるか
- 個人差(根元と前の壁の距離など)が、感じやすさにどう関わるか(→ 体の作りの面)
自分の体について考えるとき
「クリトリスか、Gスポットか」を二択で考えなくても構いません。研究の見方では、この一帯は重なって働いている可能性があります。ただしこれは仮説です。
よくある質問
クリトリスは外から見える部分だけ?
O'Connell ほか(2005)によれば、外から見える亀頭部は一部で、ほかの部分は体の内側に広がっています。
複合体説は定説?
いいえ。説の一つで、確定していません。この説に疑問を向ける研究や、別の結論のレビューもあります。
出典
いずれも PubMed に載っている要旨(アブストラクト)を 2026年10月31日 に読んで確かめました。論文の全文は読んでいません。要旨に書かれていないことは、この面にも書いていません。
- O'Connell HE, Sanjeevan KV, Hutson JM. Anatomy of the clitoris. J Urol. 2005;174(4 Pt 1):1189-1195. PubMed 16145367
- Jannini EA, Buisson O, Rubio-Casillas A. Beyond the G-spot: clitourethrovaginal complex anatomy in female orgasm. Nat Rev Urol. 2014;11(9):531-538. PubMed 25112854
- Hoag N, Keast JR, O'Connell HE. The "G-spot" is not a structure evident on macroscopic anatomic dissection of the vaginal wall. J Sex Med. 2017;14(12):1524-1532. PubMed 29198508
- Kilchevsky A, Vardi Y, Lowenstein L, Gruenwald I. Is the female G-spot truly a distinct anatomic entity? J Sex Med. 2012;9(3):719-726. PubMed 22240236
更新日:2026年10月31日|gspot.tokyo 編集委員会。当サイトは医療機関ではありません。この面は医学的な診断や助言ではなく、公表された研究の要旨を読んでまとめたものです。出血、強い痛み、発熱、排尿時の痛みなどの症状がある場合は、婦人科での受診を優先してください。